ご挨拶

日本安全保障・危機管理学会HP挨拶
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日本安全保障・危機管理学会会長
岩崎 茂

  皆様、こんにちは。日ごろから「日本安全保障・危機管理学会」(以下「当会」)の会員の方々並びに当会にご協力・ご支援を頂いております皆様方に対しまして、心から感謝・御礼申し上げます。
当会は、二見宣理事長の固い信念のもと「日本国民を対象として、安全保障・危機管理に関する知識・理論の普及・啓蒙を図るとともに、その研究の深化に努め、日本国における安全保障・危機管理の能力向上および体制整備に資すること」を目的として平成17年(2005年)4月1日に設立されました。
以降、各種の学術講演会、セミナーや定期的な研究会の開催、安全保障・危機管理に関する調査・研究等の活動を行ってきています。
設立後、もうじき二十年になろうとしておりますが、この間、わが国を取り巻く環境は一段と厳しくなってきております。中国の力による現状変更は、欧米や日本等の注意喚起にも怯むことなく継続されていますし、北朝鮮の相次ぐ弾道弾発射や核実験は、我が国対する直接的な脅威となっています。そして、わが国の北方領土を不当に占拠しているロシアは昨年、突如としてウクライナ侵攻を開始する等々、平和で安定的な国際社会を求める我々にとって極めて深刻な事態になりつつあります。
この様な環境の中、昨年末には、わが国で「安全保障に関する三文書」が改訂されました。この中で防衛力の抜本的強化が謳われ、これまでにない防衛力整備が始まっております。私は、この様な私達を取り巻く環境の劇的変化の中で、当会に求められる役割にも変化が出てきていると感じております。
当会も時代の変化に追随し、今後の時代に合うような組織体制を構築し更なる発展を目指す所存です。是非皆様方からの熱い声援と叱咤激励、ご示唆を頂ければと考えております。今後とも皆様方のご協力・ご支援をお願い申し上げます。

 日本安全保障・危機管理学会
      会長  岩崎 茂

実学の精神とともに新たなスタートを
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日本安全保障・危機管理学会
理事長 二見 宣

  日本では昭和20年に、広島、長崎に原爆が落とされました。しかし、
再発した場合の対処方法については、全く考えていません。

 ヨーロッパでは核爆発時の対処について、小学生に入った時にパンフ
レットをもらいます。核が爆発したらこうしなさい、ああしなさいとい
う絵本になっており、基本を知っているのです。また国としても、例えばフィンランドだったら、国民の87%ぐらいがシェルターに入れます。
 スイスでは一流のホテルには地下にシェルターがついています。
欧米では、対処しているのです。  
 韓国も3年程前から鉄筋コンクリートの建物を作る場合、シェルター
をつけるという法律を作りました。しかし、原爆を落とされた日本だけが、何もやらないのです。私はこれが不思議でしようがないのです。 現に、反日で、核兵器を保有している中国や北朝鮮という隣国が存在しています。当然、「防護処置」と「反撃力」を保持しなければなりません。
 シェルターと言っても普段はさまざま用途に使用されています。
フィンランドでは、音楽堂などがシェルターになっています。音楽堂は、雑音が入らないように窓は必要ないのです。普段はコンサートホールとして、コンサートやオペラで使用しています。避難所も普段は、地下駐車場として使用しています。
 スイスでは、警報が鳴ったら20分以内にシェルターになります。だから警報が鳴るまでは、シェルターを物置等いろいろと使っている訳です。このように、普段も使いながら、いざという時にはシェルターになるのです。
 アメリカの陸軍情報学校に留学中に、すぐ近くの学校でシェルターに避難する訓練を見学しました。当時はまだベトナム戦争が華やかなりし頃で、米ソ対立の時代でした。アメリカは、小学校から、中学校―高校の順でシェルターを整備したようです。
 欧米各国は対核爆発準備をしているのですが、日本はそういう準備は全くしていないし、核兵器について議論をすることもしません。原発事故や災害についても同じような程度です。

 3月11日の東日本大震災のときに、ちょうどビッグサイトに行く途中でした。外資系企業の社員はヘルメットを着用していました。ところが日本人企業の社員は普段の姿でした。日本人は、企業を含め危機対応が鈍い国民です。今のままでは、犠牲者が増える一方です。
さらに、少子化・人口減少傾向を考慮すると、日本の将来が憂慮されます。

 日本安全保障・危機管理学会は、自衛隊、警察、消防、公安調査庁等、いろいろな危機に対処している実働部隊に勤務し、実際に経験した者が、自分たちがやってきたことのノウハウを広めようという「実学の学会」です。神学論争や犬の遠吠えはやりません。

 本学会の目指す高い「実学の志」をご理解いただき、引き続きご支援・ご協力を賜れば幸いです。

憲法第9条問題を正視せよ
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拓殖大学総長・学長 渡辺 利夫

  国防は、もちろん憲法の中でも中枢を占めなければならない観念です。しかし、この中枢的観念が、とてもまっとうなものとは思えない、そういう重大な欠陥を現憲法は抱えております。
 もちろん自衛隊を我が国ははもっていますが、これが合憲か違憲かというテーマが論じられてもう久しいことはご承知の通りであります。しかし、いくら論じようとも、自衛隊という大兵力が憲法第9条からみて違憲であることは、最低の言語知識からいって間違いないことです。
 しかし、国家である以上、国家を外敵から自衛しないわけにはいかない、そのためには武力をもたないわけにはいかない。現に我が国の自衛隊の通常戦力のレベルは、世界でも引けを取るものではありませんし、隊員の士気や練度からみても世界有数のものです。どうみても、自衛隊は高度の「戦力」です。
 ところが、これを「戦力」といったのでは、第2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という条項に抵触してしまう。それゆえ、世界でもトップクラスの武装集団を、「戦力」ではなく、「戦力」にいたらない自衛力、憲法に抵触しない、つまり憲法によっても「保持しうる自衛力」だというのです。これが、日本政府の自衛隊合憲説の解釈です。この解釈は内閣法制局によって長らく踏襲されてきました。
 ところで、「保持しうる自衛力」とは何かというと。自衛のための「必要最小限度」のものだというのです。それでは必要最小限度というのはどの程度のものかというと、「相手国の壊滅的な破壊のために用いられる攻撃的な兵器とはならない程度」だというのです。
 少し具体的にいいますと、他国に届く地上配備型の対地長距離ミサイル、巡航ミサイルを発射する潜水艦などは保持できない。また、敵基地に達するまでの距離をもつ戦闘爆撃機や、敵基地をたたく精密弾道弾を搭載した海自艦船も保持できない、というのです。
 必要最小限というのがここでのキーワードですが、さらにいいますと、「海外派兵」はもちろん必要最小限度を超えるという考え方ですし、集団的自衛権もこれを行使することは憲法9条で許される範囲を超えるからこれもだめだ、ということになります。
 常識的な言語感覚からみて明らかに違憲のものを合憲と言い募るために、ありとあらゆる知恵を絞ってひねくりだしたものが政府解釈というものです。集団的自衛権はこれを「保有しているが行使できない」などという解釈は、もうよくそんなこと平気でいえるなあ、といった類のものです。
 サンフランシスコ平和条約により主権国家として独立した時点で、憲法改正を敢えてやらず、不作為を長年つづけてきたことのツケは、もう明らかです。現憲法で中国や北朝鮮の好戦的な対日行動に対応できないことは、もはや自明のことです。政府の無理に無理を重ねてきた解釈、政府解釈の無理はもう覆いようのないものとなっています。
 この無理は、誰よりも内閣法制局が一番よく知っているのではないかとも思われます。産経新聞社の「国民の憲法」の起草委員会のメンバーでもあった西修教授は、ご著書の中で「案外、憲法改正を望んでいるのは、内閣法制局自身であるかもしれない」と書かれていますが、解釈の無理を一番よく知っているのも内閣法制局なのでありましょうから、私も西先生と同じように感じます。
 憲法のまさに中枢の中の中枢である国防のところでの、このいかにも無理に無理を重ねた解釈を施して、これを繰り返すというのでは、憲法という主権国家の最高法規の権威を毀損させ、法治国家の大系を危機に貶めるものだといわざるをえません。 
 日本安全保障・危機管理学会の発信力が高からんことを切に祈っております。