(機関紙2017年春号vol39号より引用) 2017.9.1
理 事 長 二 見 宣
反日を叫ぶ北朝鮮と中国からの核・ミサイル攻撃に対し、まず、日本国民個々の安全はどう守ればよいかを考えましょう。
北朝鮮は、米、露、英、仏、中国の5大国に並ぶ核大国になりました。ミサイルは、米・露・中に次ぐ大国になっています。化学兵器も、金正男氏暗殺に使われたバイナリーVX兵器など日本よりもはるかに強力です。なにしろ、人口2,400万人で、総兵力110万人の軍事大国です。ちなみに、自衛隊の定員は24万7千人、現員は22万7千人です。
戦争やテロからの被害を最小限にするために大事なのは、警報の迅速な伝達と避難できるコンクリート製の建物です。
北朝鮮からのミサイルは、発射してから約7分ほどでわが国に着弾します。中国からだと10分ぐらいです。ミサイルには、「核兵器」、「化学兵器(毒ガス)」、「爆薬・火薬」または「生物兵器」等が政治目的により搭載されます。
これらの大量破壊兵器の日本への運搬は、発見されやすいミサイルだけでなく、北朝鮮が得意の工作船、民間・軍用の航空機や漁船などにより、日本へ持ち込みは可能です。まず、核爆発対処の要点を示します。
1 警報(Jアラート)と事前避難
「警報(Jアラート)」がミサイル発射7分以内にサイレンやテレビ・ラジオなどからきちんと国民に届き、安全な施設に退避しなければなりません。が、鉄筋コンクリートの堅牢な建物に居る方や地下室に居る方は、大丈夫ですが、木造家屋の方々はロスタイムがあるので「7分」では無理でしょう。
核・ミサイル発射は、まず、アメリカの衛星が捕捉し、初期情報を処理して日本に伝達されます。7分以内に日本国民にJアラートが届くのは困難と言えます。いままでに北朝鮮が数多くのミサイルを発射していますが、着弾前にJアラートが届いた実績はありません。核爆発前の事前避難は、大変難しいと言えます。
2 核 爆 発 対 処
「核爆発」の当初は爆心に近いと閃光により数分間、閃光盲目になります。
爆風は、音速の秒速340mでガラス破片・木っ端などを含んで拡がります。この「爆風」の被害が、大問題です。
「核爆発」の被害は、①「閃光・熱線」(通称:ピカッ)、②「爆風」(通称:ドン)、③「放射能(初期放射能、残留放射能)と④「電磁パルス」(EMP)の4種類があります。
「爆風」と「残留放射能」以外は、核爆発当初の数100万分の1秒で終ります。すなわち「閃光・熱線」、「初期放射能」と「電磁パルス」は、ピカッと爆発時に光る時のみです。
「爆風」は、音速の秒速340mの衝撃波が通過するドン音で終わりますが、最大の被害を出す原因です。
「残留放射能」は核爆発後、約1時間後からきのこ雲から降り始める放射能を含む「死の灰」に含まれております。昭和20年からしばらくは、この「ピカッ・ドン」が原爆の別称でした。
核爆発の概略のエネルギー比率の一例は、次表です。
種 類 エネルギー比率 時 間
爆 風(衝撃波) 50% 音速以下で伝搬し、1回。(1Km=3秒)
熱 ・ 光 35% 瞬間~0.1秒 (閃光盲目、火災の原因)
初期放射能 5% 瞬間~1分以内
残留放射能 10% 爆発1分以降(誘導放射能+フォールアウト)
電磁パルス(EMP) ― 0. 001秒まで
(ガンマー線が強力な電磁場を発生)
(比率は、核爆弾の規模・効率、核爆発の高度、気象等により変化します)
3 爆 風 被 害 対 処
核爆発の直後は、閃光盲目のためはっきり見えない場合でも、まず目と耳を保護しながら、爆風の対し強い建物や壁の後方や、道路の側溝に入ることです。地下が一番安全です。爆風に露出していれば、吹き飛ばされるか、内臓破裂か、飛散物での打撲死となります。とにかく「目の保護」が1番大事です。
木造家屋や立ち木の後ろでは、吹き飛ぶか 倒壊しますので、生存はできません。
フランス軍の軍用教範では、次図のように命じています。
(良い例) (失敗例)
フランスなどは子供達に、上図の軍用教範とほぼ同様な絵本やパンフレットを配布し、コンクリートや石造りの建造物の陰に入れとか、道路の側溝に入れとか、目を保護せよと示しています。欧米では子供の頃から、核爆発防護の基本を絵本やパンフレットなどで知っているのです。
爆風の「ドン音」が過ぎれば、安全な地域・施設へ退避したり、被災者の救助や消火活動を開始することです。被害が大きい「爆風」は、秒速約340mですので、爆心から1000mであれば3秒で、2000mであれば6秒で到達します。安全の目安は、5000mで15秒以上です。いずれにしても「ドン」の音がして、空中を飛散物が通過すれば安全なります。
飛散物で、目が損傷しないことが第一です。次に耳です。とにかくピカッと光ったら
目と耳を保護します。そして、爆風からの遮蔽物
の後ろに入ることです。
4本の指で「目を保護」し、親指で「耳穴」を
塞ぎ、シェルターに入る。これは、ベトナム戦争
が華やかな頃、小生が米留学中にアリゾナ州の
学校で見学した退避訓練の風景です。
特に、目が不自由では、燃えている街からの
安全な脱出は困難となります。怪我や火傷は、
治療できますが、失明は一生治りません。
4 熱 線 被 害 対 処
熱線に対しては、燃えない家・燃えない家具・燃えないカーテンが重要です。火災は広域で発生するので、「消防車は来ない」、「停電のため水道も出ない」と心得るべきです。自衛隊も、本来任務の防衛出動のため救援には来られないでしょう。
マンションの場合は、カーテンとカーペットは不燃品にすべきです。ベランダには、消化砂になる植木鉢を育て、水の入ったペットボトルを準備しておけば便利です。
個人としては、白色の下着を着用する。白色は火傷を軽減する色です。黒色系服装でも露出よりはましです。
いずれにしても、木蜜地帯に着火すれば、関東大震災や昭和20年の3月10日の東京大空襲、8月6日の広島、8月9日の長崎が再現することになります。とにもかくにも「燃えない家」「燃えない事務所」・・等が大事です。
5 放 射 能 (線)被 害 対 策
放射能(線)への対策は、福島原発の事故で、広く周知されていますが、3原則は、
◎ 放射性物質を体内に入れない(食べない、飲まない、吸いこまない、傷口に付けない)
ロシアの情報要員のルビネンコ中佐が、平成18年1月にイギリスで「ポロニューム」で殺害された事件は、これです。
◎ 放射能の低下を待つ(空中の放射線は、7時間で10%に、2日で1%に減衰する)
◎ 放射線物質を洗い流す(海自艦艇の構造は海水洗の設計。第5福龍丸は無知による失敗)
です。
いずれにしても、放射能(線)の強度は、時間が経てば減衰しますが、器材がないと測定できません。
6 電磁パルス(EMP)対策
電子機器には有害ですが、人体にはあまり影響がありません。対策は、避雷処置にほぼ同じです。
特に、高高度の核爆発では電磁パルスの効果が強いが、地上での核爆発のEMP被害は少なくなるので、気がつけば電子機器が作動しなくなっています。
電子機器が作動しなくなったら、核攻撃の事前攻撃や高高度の核実験の可能性があり、注意を要します。
大事な電子機器は、金属容器に入れておくとか、アースしておくとか、雷対策と同じような防護処置が必要となります。
7 核兵器対策はシェルター
安全・安心の究極は、スイスやフィンランドと同様にシェルターの建設です。シェルター機能を持った鉄筋コンクリートの学校、住宅や事務所が大事です。
国民皆兵のスイスやフィンランドを例にとるまでもなく、家族が安全でなければ勇敢な兵士と云えども、国境防衛に行けません。3.11東日本大震災の時に宮城県内の部隊で、津波により死が迫った妻子からの携帯電話や家族の訃報を受けた隊員たちの実話が語られていますが、人間としてもっとも辛いことです。
スイスやフィンランドでは国民数以上のシェルターが建設されていますが、国民皆兵の国では当然のことです。家族が安全でなければ、国境に配置される兵士は戦えないのです。勇敢な自衛隊員と云えども、家族が護られないようでは、任務優先ではなくなるのです。
命令により家族と離れて遠くに派遣される自衛官の官舎は、シェルター付きの建物にして家族の安全を図らねば、国家の大事な時に任務達成は難しいことになる。
当然、次代を担う若い子供たちが生き残るため、小学校や中学校は校庭を活用したシェルターを準備したいものです。アメリカでは、小学校から逐次、中学、高校へと公立の「3か月生存の地下シェルター」を整備しました。最近公開された米国会議員用のシェルターは、ホテルよりも高品質でした。これらのシェルターがあるから、アメリカは「キューバ危機」などソ連との冷戦が戦えたのです。
周辺国情勢から、生き残る施策を公私ともにそろそろ始めて下さい。
おわりに
強い反日思想を持った北朝鮮や中国は、日本向けて核兵器が、何時ごろ、どのような状況なれば日本に被害を与えるでしょうか。まず北朝鮮が一番危険です。偉大な将軍様の発言からも、「日本」とか「在日米軍」といった言葉が多くなりました。また、北朝鮮は、経済的には悪化します。
核・ミサイル発射にあたっては北朝鮮も当然、予行をして風向・風速・空気密度や地球の自転の影響を事前に情報収集する必要があります。この活動を最近は活発化させているとみるべきです。
ミサイル発射の方向性からは、三沢基地、横須賀基地、沖縄やグアム島の基地が対象になっているのではと推測されます。工作船や漁船による核攻撃の場合は、日本海に面した都市や沖縄が目標になるでしょう。
実行までに6~8年かかるでしょうが、最終的な目標地点は、偉大な将軍様がきめますので、今後の将軍様の恫喝外交と瀬戸際外交の発言傾向をウオッチしていれば時期も目標も明らかになるでしょう。
日本も「シェルター」と「敵地攻撃能力」を準備しないと、外交の段階で無条件降伏の敗戦になるかもしれません。